2009年5月28日

企業通貨

ポイントカードが企業の連携によって、企業通貨としての価値を帯だしています。他カードへポイント変換のできる「ポイ探」なるサイトもあって、消費者は企業間の乗り入れ、コラボを意識し始めています。通貨に近い形になって、目に見える身近な価値の認識が広がってきたようです。見方を変えれば企業の連携が具体的に消費者の立場にまで降りてきたということかもしれません。

そのひとつがJR東日本発行のSUICAです。ビックカメラでの購入で溜まったビックポイントでSUICAをチャージできるようです。ヨドバシでも同様のようですね。 ビックカメラやヨドバシカメラがSUICAと連携するわけ、それは同業の巨大なヤマダ電機の存在があるようです。

「企業分析力養成講座」で山口揚平氏は小売業種の熾烈な競争原理によって純粋な小売業は仕入れの拡大とマーケットの拡大へ走らざるを得ないことを説明しています。彼の分析は一般人が経営と分析と聞いて陥りやすいB/SやP/L、キャッシュフローだけではない、もっと多角的な9つの視点から複合的な関連性を示しています。

企業の拡大ではヤマダ電機のMAで分野全体が一段落しかけており、ビックカメラの戦略としては小売業の土俵を変えることと分析されています。次の段階へ向かう必要があったのだと。

それが駅前、駅近の大型店舗に活路を見出すことであり、JR東日本との連携につながりました。また一方、JR東日本としてはエキナカ、エキビルという付加価値の部分で活路を見出そうとしていて、両者の連携が進んだようです。

ここにおいて、企業通貨、つまりポイントカードはこれまでのOTAKUによる狭い領域の奥の深い物語ではなく、誰にでも共通する普遍的価値を見出したようです。つながること、目に見えることの重要なポイントです。

一方で地域通貨は?と言えば、、、地域は3万人の町も40万人の町もコンパクトシティと都心再生で花盛りです。都心再生というごくごく一部のみに焦点を当て、近視眼的に町を見るようになっています。

商店街は自分たちの足元だけにとらわれ、どのような消費者がどこから来て、どのような行動をとってゆくか、何を求められていて、どのような要望があるのか、など通常のマーケッティング探索機能さえ、果たしていないように感じられます。都心再生事業の欠陥であり、地元の利権と利害が絡んだ都心再生構想の破綻です。

これでは、古い商店街の活性化も夢と終わりますし、地域通貨などとてもできないでしょう。
生き残りに必死になって、目を見開いた企業のあり方を取り入れる必要がありそうです。

2009年5月26日

協働から生まれる形とは

閉鎖的であったり、また開かれていても同じ志向を持つ組織からは豊かな、多面的な思考は生まれてこないものです。そうした貧困さを打開するために協働という組織の形態が生まれてきました。

デザインや設計の世界では昔から多くの人との協働で、そして屈託のない意見交換により、新たな発想を生み出してきたのです。今そのような方向がコミュニティにおいても重要となってきています。縦割りの閉鎖的な行政組織では様々な利用者である市民や専門家の期待にとても応えられないからです。
しかし、協働の中で市民の声を聞いてつくるとはどういうことかがまだわからないようです。市民の多様な声を聞いて、アイデアを膨らませて作れば、そっけない、何もない、すました、ガラス張りの図書館にはならないのが一般的です。

岡崎市図書館交流施設。このさびしい施設の状況は協働を拒否した悲しい結果なのではないでしょうか。建築とは人の思いが込められたものなのです。その思いは訪れた人にもわかってしまいます。

また、窓のないガラス面は、近くのせせらぎの川風を引き込むことなく、鳥のさえずりを異次元のものとしてしまいますし、ましてや、窓のない理由が、利用者が本を外に盗み出さないようにとの配慮からだと聞くとあきれるばかりになります。建築家の倫理はどこへ行ってしまったのか。。。

本来はそこ、ここに市民の居場所となるいろいろの、行政マンには想像もつかないような、抽象論しか語らない設計者には思いもつかないような豊かな場所と場面が用意されているはずなのです。

このようながらんどうの図書館は声を聞かなかったことの象徴でもあります。

広まってきた市民協働、官民協働とも言いますが、形だけで終わっているようです。かけ声、ないしはポーズ、あるいはガス抜き、、、、、。

協働によって生まれてくる形とは、統一された既成の完成美などではなく、多くの価値観にあふれ、多面的でむしろ雑然としたような人間的な様相を持ったものになるはずなのです。統一的、抽象的秩序が市民にとって必要であるならば、市民の声など最初から聞く必要はないのです。

悲しいことに、どこの町でも中心地の整備された歩道は単調でさびしい舗装となっていたり、樹木も貧相な様相を呈していたりで、人間性に欠けています。それは緑政課や土木課が実際の町そのものや人や樹木や敷石を見ないで、ユンボで掘って、固めただけの代物だからなのです。

しかし、協働によって生まれる形とは、それは古くからある住民が自ら育ててきた街並みのようなものです。なんとなく統一が取れているようで、でも、個性は至る所に溢れている。それが町のエネルギーになり、生命力になると思うのです。

福岡で会った小さな町の職員は話し合いの相手が見つからないから、町に出向いていく、営業や取材に出掛けて行くと自ら語ってくれます。対話によって豊かなものが生まれてくるものなのです。

2009年5月25日

グローバルアリーナ

グローバルアリーナは、これまで日本には少なかったスポーツ人材育成を目指し、地域のスポーツ振興事業に取り組む企業です。駅から も近く、山と広々とした芝生に囲まれた競技場や宿舎は、滞在型の豊かな環境を持っていました。
ここにあるパン工房やカフェ、それらに付属した小さな図書館に興味がわいただけでなく、その運営や経営に注目し、視察に行ってきました。
青少年のスポーツ大会や合宿を中心に滞在型の人材育成を行うほか、少年サッカー大会や4日で1万人が集まるというスポーツイベントを開催するなど、現在は年間10万人程度の集客があるそうです。滞留型複合施設を併設しているため、一日ここで過ごしてゆく参加者も多いということです。
中心となっている芝生の広場に、レストランや高級食材を置いたショップ、パン工房や図書館があります。図書館は年間70万円ほどの予算で、休館日がなく、11-19時または10-20時の運営となっています。健康やスポーツ、ガーデニングや交流のある国の書籍を中心に、宿泊者や滞在者に貸し出されています。蔵書のボリュームではなく、いかにテーマを絞ることができるか、そうしたことも地域の小さな図書館にとっては大変重要なことであると知りました。
当初、地元企業の創業者の上場益によって設立されたのですが、その後、独立採算となり利用者の会費やゲストの宿泊を財源にして経営されています。スポーツ施設でありながら、また経営的な組織体でありながら、若者への情報発信や文化学術への志向など、文化を財産として捉え、次世代を視野に入れた長期展望を持つ運営を考えているようです。パン工房や図書館も文化の情報発信源として考えられているようです。
まだまだ、この分野は日本には根付いてるとは言えず、経営的財源が限られているのは仕方がありませんが・・・。将来への人材育成や青少年の交流に力を注ぐことで、市民や地域へ無形のものを還元し、さらにそれらをマーケットと考え、コンベンションを起動して都市機能をも取り込む考えです。次世代への発信、文化や学術への貢献、公共的、NPO的経営基盤など、スポーツ事業の裾野を広げることで10年後の収益を視野に入れているようです。
この小さいけれど居心地の良い図書館を軸に、芝生でくつろげるワークショップ型ブックモビールを展開する発想が生まれてきました。発想が次なる発想を呼ぶ。これが次なる創造を生み出すのだと思います。

2009年5月19日

北九州市戸畑図書館-地域による図書館運営

辻桂子氏から戸畑で面白い人が図書館長をやっていると聞き、北九州市戸畑図書館、館長伊藤豊仁氏にお目にかかりに行きました。図書館の運営を尋ねると言うよりも、経営者にその経営理念を聞いたようなような印象が強く残っています。

北九州市では2005年に指定管理者制を導入したのを機に、地域の青年会議所がNSK日本施設協会を組織して、地域に根ざした情報発信のための新たな図書館理念を掲げ、その館長に伊藤豊仁氏を招聘したようです。

指定管理者とは、本来は市民の目線で、柔軟できめ細かなサービスを、というのを求めて導入されるものですが、どの地域でも実際にはコスト削減のために導入されており、サービスの空洞化へ繋がると批判が出ているケースが多いようです。

図書館の指定管理者には、図書館業務を遂行する全国規模の大手業者が請け負うことが多く、図書館を単に本を貸し出す機能としてしか考慮せず、地域の司書をアルバイターとして派遣するだけの運営になりがちですが、戸畑では自分たちの図書館を自らの経営理念で自分たちで運営しようと立ち上がったわけです。

現在は最初の1期3年が終了し、その成果が市から認められ、2008年度より2期目(5年)に入っているようです。

18人の司書職員(館内14人、4つの分館に4名)は90名の公募の中から選ばれたそうです。現在も大変苦しい運営状況・人的状況ですが、直営時には司書の資格を持った職員が半数しかおらず、業務が偏り、司書が図書館外部へも出かけてゆくなど、本来必要なはずの多様な運営を行うことができていなかったことに比べれば、むしろ現在のほうが効果的に業務が取り行われているということです。

伊藤氏は自ら企業家としての経歴を持ち、そのキャリアを生かし、図書館運営に地域のつながり、大学や学術団体との連携や市議会へのロビー活動などによてイベントや啓蒙講座を開いています。そこには、目指すべき図書館の姿があります。行動する図書館、情報を発信する基地、市民シンクタンクとしての図書館、、、、、。


伊藤氏には何事も、楽しまなければならないという、基本的な起業人の発想があるようです。リーダーの豊かで柔軟な資質とそれを支え登用した組織のバックアップがこの新しい図書館像を推進していると言えます。

本来の指定管理者制度の本質が見えてきます。

2009年5月9日

JR KYUSHU

新しい図書館構想をまとめたくて、福岡へ行ってきました。『真夜中の図書館』の辻桂子さんとの打ち合わせと北九州市戸畑図書館を訪問するためです。先に戸畑図書館の伊藤館長にお会いするのに小倉で下車。

新幹線を降りると、何か違う雰囲気がぐぐっと迫ってくる感じがしました。

近郊電車がかつての長距離電車のような重厚なデザインと雰囲気を持っているのです。丸みを帯びた堅牢な形状から感じ取れる素材の厚み、原色にはない濃厚な深い色彩、落ち着いたインテリアを創る小さな窓、控えめできらりと光るエンブレムなどにも目が行きます。、、、、、かなり思い入れのあるデザインであることがわかります。

東京を走るJR東日本のアルミ製の軽い通勤電車とは発想が全く異なっています。

国鉄が民営化されて20年経ち、ようやく地域性が現れてきたのでしょう。
JR九州は他のJR各社とは異なり、デザインに関する受賞歴が多く、またそれをきちんとWEBサイトに事業報告として掲載しています。

1988年「ホテル海の中道」のアートディレクションを手がけたことを契機にJR九州の車両デザインや広告のデザインに関わってきたデザイナーである水戸岡鋭治氏の存在がそこにはあるようです。地域振興・活性化の基盤を担う大きな戦略として成功を収めているように感じられます。

小さな地域での営業のため、JR東日本や東海などと比べて経営的には厳しいと思われますが、十分に社会的使命を果たし、地域の独自性を生み出しています。

■ハイパーサルーン 1989 ローレル賞(鉄道友の会選定)
■ゆふいんの森 1989グッドデザイン商品選定(通商産業省・Gマーク商品に選定)
■200DC 1992 ローレル賞(鉄道友の会選定)
■博多駅コンコース 1992 福岡都市景観賞(福岡市選定) 92商環境デザイン賞特別賞(日本商環境設計家協会選定) SDA賞(日本サインデザイン協会選定)
■由布院駅 1992鉄道建築協会賞入選(鉄道建築協会選定)
■熊本駅ビル「フレスタ」1992鉄道建築協会賞入選(鉄道建築協会選定)
■JR 九州の列車 1993公共の色彩賞(公共の色彩を考える会選定)
■787つばめ 1993ブルーリボン賞(鉄道友の会選定) グッドデザイン商品選定(通商産業省・Gマーク商品に選定) 1994ブルネル賞・長距離旅客列車部門(国際賞)
■つばめ客室乗務員制服1994ブルネル奨励賞・制服部門(国際賞)
■JR 九州の列車とバスの色 1995北九州都市の色彩賞(北九州市選定)
■ソニック883 1995グッドデザイン商品選定(通商産業省・Gマーク商品に選定)1996 H 8 ブルーリボン賞(鉄道友の会選定) ブルネル賞・長距離旅客列車部門(国際賞)
■ソニックの「動く彫刻」 1996ブルネル奨励賞・芸術の鉄道への適合事例(国際賞)
■会社案内など 1996ブルネル奨励賞・視覚情報グラフィックデザイン(国際賞)
■宮崎駅 1996宮崎市都市景観賞(宮崎市選定)
■美咲が丘駅 1997福岡県建築住宅文化賞貢献賞(福岡県選定)
■JR九州のデザイン活動 1998SDA特別賞(日本サインデザイン協会選定)
■新ゆふいんの森 1999JIDインテリアスペース部門賞(日本インテリアデザイナー協会選定)2001 H13 グッドデザイン賞((財)日本産業デザイン振興会)
■小倉駅 1998 鉄道建築協会賞入選(鉄道建築協会選定)1999照明普及賞九州支部賞(照明学会)2000グッドデザイン賞特別賞((財)日本産業デザイン振興会)公共の色彩賞(公共の色彩を考える会選定)
■JR九州 2000 国際交通安全学会賞(国際交通安全学会)業績部門:デザインを中心とした魅力ある鉄道づくりによる地域活性化
■長崎ターミナルビル2000 照明普及賞優秀施設賞(照明学会)
■885かもめ・885ソニック 2000照明普及賞優秀施設賞(照明学会)2001 ブルーリボン賞(鉄道友の会選定)ブルネル賞・長距離旅客列車部門(国際賞)グッドデザイン賞((財)日本産業デザイン振興会)
■815系近郊電車2001ブルネル賞・近距離旅客列車部門(国際賞) グッドデザイン賞((財)日本産業デザイン振興会)
■817系近郊電車 2001グッドデザイン賞((財)日本産業デザイン振興会)
■800系つばめ 2005ローレル賞(鉄道友の会選定)グッドデザイン賞((財)日本産業デザイン振興会)JIDAデザインミュージアムセレクション(日本インダストリアルデザイナー協会)
■JRホテル屋久島2006照明普及賞優秀施設賞(照明学会)
■日向市駅2007優秀木造施設 林野庁長官賞(木材利用推進中央協議会、農林水産省後援)鉄道建築協会 作品部門 入選・国土交通省鉄道局長賞((財)鉄道建築協会)2008建築九州賞一般建築部門 作品賞((社)日本建築学会九州支部)

2009年5月6日

アートディレクション

「アートディレクションの可能性」は現在活躍するグラフィックデザイナーによるトークセッションが収められたものです。

彼らの多くはグラフィックデザイナーというその名称から想像される枠をはるかに超え、もっと重要な役割を担って活動しているようです。パッケージやポスターのデザインやCMなどの映像制作に留まらず、商品開発や企業イメージのプロデュースまで行っています。

企業や製品の本質を捉えて、ありのまま描き出すことに (私たちには思いもよらない素敵な描き方ですが、、、) 成功していると言えます。
プロデュースし、ディレクションし、そしてビジュアライズするという3役を引き受けている彼らは、、、、、、自分たちを「物申すデザイナー」と位置付けています。

一瞬にして物の本質を表現するビジュアルコミュニケーションという分野での彼らの能力は、ライフスタイルの方向性、しいては現代社会の方向性をも形造ることができるのです。

私の専門分野である”建築”といった長大で孤高と言われがちな’とっつきにくい物’ではなくて、身の回りのそこここに存在する’あふれた物’によって、方向づけることが可能なのです。

たとえば、資生堂のTUBAKIという製品は、その名を「なでしこ」でもなく、また「さくら」でもなく、静かな庭に妖艶にたたずむ『椿』をテーマにしています。『椿』は1年を通してその深い緑の葉に光沢を湛え、花は色も形状も個性が強く、豪華に、時には清楚にその花を咲かせます。実はもちろん長く黒髪に愛されて来た椿油を蓄えています。

日本女性の奥深い美と資生堂という企業イメージとを同時に具現化し、多くの人の視線を釘づけにするあのCM。それは視聴者の意識を同じ方向へと導く強さを持ったものと言えます。

コミュニティをデザインするということは群造形に近い感覚だと考えてやってきましたが、方向性をつけるさらなる強さが必要のようです。多様なエネルギーを受け止めることのできる、プロデュース力とディレクション力そしてそれらをありのまま、ビジュアル化するという事が必要のようです。

2009年5月3日

閉じられたコミュニティでNOと言えること

閉じられた、しかも小さな地域のコミュニティの中では、NOを発することが難しいようです。 しかし、同時にそれは、YESとも言っていないことにも気づかされます。密接なつながりとあつれきや思い込みによって、生まれてくるようです。メディアであるはずの新聞社でさえ、そのようであると感じられます。

この、NOとも、YESとも言わないあいまいな姿勢が地域の、そして地方の政策をなんとなく形作っていきます。小さな社会で、その小さな部分しか視野に入らない閉鎖性を打ち破り、 NO、、、あるいはYESと言える環境づくりが地域の活性化には不可欠のようです。

コミュニティシンクタンクの次のかたちは、触媒としての中間媒体から閉鎖性を解放する仕掛けを与えてゆくプロジェクトへ、GATHERING から DIRECTION へと、その立ち位置を広げてゆきたいと考えています。

NOとYESの代弁者として。

思考再開です。