2008年10月25日

自らが考え行動するという自治の理念/ニセコ町まちづくり基本条例

ニセコ町まちづくり条例は次のように制定されています。それぞれに強いメッセージが込められています。そこに新たな、次代の自治の意識や姿が見えているような気がします。

「情報共有」と「住民参加」を基盤とし、「市民」として主体的に考え、主体的に行動する、町づくりが方向づけられています。

第1章では、
まず、まちづくりの目的が「町民の権利と責任を明らかにし、自治の実現を図ること」と明確に市民の立場から述べられています。

この1章で提起された、町人の権利と責任とは4章において、町民は「まちづくりの主体であり、まちづくりに参加する権利を有し」、「その参加においてお互いが平等であり」、同時に、「町の不当な関与を受けない自主性及び自立性が尊重される」権利を持つこと、「まちづくりの主体であることを認識し、総合的視点に立ち、まちづくりの活動において自らの発言と行動する」責任に触れられています。


第2章では、
その目的を実現するため、町民がまちづくりに関する情報を共有することを基本原則とし、

町人は情報の提供を受け、自ら取得する権利を有する、一方で、町は、その企画立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、その経過、内容、効果及び手続を町民に明らかにし、分かりやすく説明する責務を有するとされ、それぞれの過程において、町民の参加を保障しています。

つまり、「町は、町政に関する意思決定の過程を明らかにすることにより、町の仕事の内容が町民に理解されるよう努めなければならない」とされ、まちづくりの意思決定が市民と共にあることが明確に定められているのです。(第3章 情報共有の推進)

現在、多くの地方行政が自分たちだけで町の方向を決定し、議会で早々に決定し、その既決事項を粛々と、みせかけの市民会議や市民ワークショップやパブリックコメントにより市民を誘導してゆくやり方とは大きな違いがあります。また、市民協働のためのルール作りが推進されようとしていますが、それは情報を公開せず、市民の権利をないがしろにした上で、市民に責務だけを課す、一方的なやり方とも大きな違いがありますね。




○ニセコ町まちづくり基本条例 平成12年12月27日 条例第45号
目次
前文
第1章 目的(第1条)
第2章 まちづくりの基本原則(第2条―第5条)
第3章 情報共有の推進(第6条―第9条)
第4章 まちづくりへの参加の推進(第10条―第13条)
第5章 コミュニティ(第14条―第16条)
第6章 議会の役割と責務(第17条―第24条)
第7章 町の役割と責務(第25条―第35条)
第8章 まちづくりの協働過程(第36条―第39条)
第9章 財政(第40条―第45条)
第10章 評価(第46条・第47条)
第11章 町民投票制度(第48条・第49条)
第12章 連携(第50条―第53条)
第13章 条例制定等の手続(第54条)
第14章 まちづくり基本条例の位置付け等(第55条・第56条)
第15章 この条例の検討及び見直し(第57条)

2008年10月20日

矢祭町議会決意宣言「町民とともに立たん」

今、小さな町の気概に圧倒されるのではないかと思います。矢祭町、ニセコ町、、、、。しっかりとした自立の理念を持ち、自らのビジョンを掲げ、本当の民主主義、市民主導のまちづくりを目指しているようです。

「町民とともに立たん」と宣言された矢祭町議会の決意です。http://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AC020004&WIT_oid=icityv2_004::Contents::1270

国の目線によって、ふらふらとぶれる多くの地方都市に比べ、そこにはぶれないビジョンとその方向を見極めるべき議会の役割が明確に刻まれています。

矢祭町議会は平成13年10月31日、議員提案により、「合併しない矢祭町宣言」を全国に先駆けて全会一致で議決した。町の羅針盤を高らかに宣言したこの檄文は、全国の地方自治体への励ましとなり、目標となり続けている。

「その当たり前の議員の姿勢と哲学がきしみを上げ始めていることを、我々は痛憤の思いで受け止める。だが、我々は看過しはしない。すべての地方議員に対して、自身の立ち位置とあるべき姿を改めて問い直し、警鐘を乱打するものである。

我々矢祭町議は、町民とともに立たんの決意をここに宣言する。今、議員たるのその原点に帰る。 国主導による「平成の合併」が雪崩を打つ中、我々の「合併しない宣言」は全国に熱烈な感動をもって受け入れられた。

だが、旬日を置かない同年11月13日、総務省行政体制整備室長が来町し、翻意を促された。室長曰く、「合併の何たるかを矢祭町の多くの町民に説明し、合併の方向へ翻ることを期待する」と。室長の語る合併のメリットは、「首長や特別職、議員などを削減することによって大きな財源が生まれ、その削減によって生まれた大きな余財を高齢化社会の軍資金できる」という内容だった。

だが、その言質からは、地方自治が担うべき民主主義をいかに為すべきかについて、ただの一言も言及されなかった。そして、国は我々の方向性を「町民に対する背信行為」「首長や議員の保身のため」などと、時に面罵し、時に誹謗した。我々が目指すのは、きめ細かな行政であり、住民の目線に立った行政である。かかる哲学以外に、行政のあり方を指し示す松明はない。「合併しない宣言」によって、我々矢祭町議は松明を手にした。この松明をたやすことは町民への背信行為である。もしこの松明の灯を消すことがあるとするならば、それは有権者たる町民の判断によってのみであり、その他の何者によっても妨げられるものではない。

今、日本の国全体に暗雲が立ちこめている。それは、指導者が国民の立場に立っておらず、自分本位の判断に終始しているからにほかならない。このことは国民にとって非常に辛いことだ。だが、ここ矢祭町に限っては、役場、議会、町民が三位一体となって町づくりを進めてきた。それを体現したものが、平成18年度から始まった「矢祭町第3次総合計画」である。「郷土愛」をうたい、共に支え合いながら暮らせる町づくりを推進し、「元気な子どもの声が聞こえる町づくり」を政策の中心に据えた。また、それを貫くために、町の憲法たる自治基本条例を制定し、平成18年1月1日から施行された。その第7条には町議の責務として「町議会議員は、町民の信託を受けた町民の代表である。議員は、町民の声を代表して、矢祭町の発展、町民の幸せのために議会活動に努める」とうたわれている。我々は常に町民の一人ひとりの立場に立って町政に参画しなければならない。町民の生活こそが、日々の議員活動の中で、最も気に掛けねばならない問題である。

我々が受ける報酬は、町民が汗を流してかせいだ税金であることを忘れてはならない。・・・・・・・・・・50年後、100年後もびくともしない矢祭町を作り上げるためには、議会はもう一度原点に帰らなければならない。我々議員は、町民の艱難辛苦を憂い、嘆く声を聞き、見たとき、現在の報酬制度にあぐらをかいているわけにはいかない。そして、我々は報酬制度を根本から考え直すことを決意した。その際、我々は世間一般の常識にとらわれない。矢祭町はいかにあるべきか、矢祭町議会はいかにあるべきか―― ここが我々の議論の出発点であり、すべてである。 

何よりも経費の削減によって生まれる余財を、町民生活を豊かにする町民密着の政策に差し向けることができることを我々は何よりも喜ぶ。この問題に真正面から取り組むことは、決して地方自治を卑しめるものではない。むしろ地方自治の本来の姿を体現するもので、全国の地方自治体に範を垂れることになると確信している。「合併しない宣言」を決議した矢祭町議会だからこそ、陋習に凝り固まった堅固な壁に風穴を開けることができる自負を持っている。今回の我々の決断が郷土を愛する全国の人たちに全的に歓迎されるに違いないと確信をもっている。今、我々矢祭町議は宣言する。町民とともに立たん。」(抜粋)

2008年10月19日

場当たり地方行政

岡崎市では周辺のネットワークを解体しながら、巨大な箱ものを建設しています。分館がないのに100億円もかけた図書館交流施設、地域の文化財には目を向けず、解体に追い込んでいるのに、東京の文化財を5億円もかけて移築します。

次は新市民会館です。しかし、担当者なる行政マンは次のように語っているようです。

「まだ場所も決まっていないので、何も面白いことが言えない段階です」

「来年には土地を決め、だいたいの予算を決めてからパブリックコメントを出したいと思っています。」

「現在の市民会館からそう遠くないところで、具体的な候補地がないので案が進まない。」

「改築と新築のどちらがいいですか?」

「33億円の減収もあり、大規模なホールは考えていません。」


図書館も文化財も、そして市民会館にも、ビジョンすらないことがわかりますね。地域を見つめ、それらを再構築し、将来構想を企画する必要がある。それらがない限り、場所も予算も規模も、改築か新築かなど決まるはずはない。

市民劇場へ向けて、プラットフォームづくりを市民自ら始める必要があります。

2008年10月18日

政治の戦略

日本の政治には戦略がないとたびたび言われています。しかし、戦略とは公開してしまったら、戦略にならないのではないかとも感じられるのです。戦略を敵に送る企業はたぶんないでしょう。

拉致問題を声高に語る自民党、独裁国家にはこちらの短絡的な意図を見せないことが必要だし、早期の解散を迫る民主党、解散を迫ることによって弱みも弱さも見せることになるように思うのです。もっと、もっと、次の次を考える必要があるのではないかなぁ、、、、、、、めぐみさんのことなど忘れるよ、選挙なんていつでもいいよ、くらいのことをあからさまにし、その陰でそれぞれ奪還計画を練る必要があるのじゃないかな。欲しいものを欲しいといって得られるほど甘くないと思うのですが、、、、、。

市民にも自治を奪還する戦略が必要なのです。

ストリートビユー

GOOGLEのストリートビューが、その是非が、話題になっています。
ストリートビューとはGOOGLEのマップ上で、東京や大阪などの都市部を中心に道から見た風景が360°のパノラマで見えるようにしたものです。通常のマップや地図のように上空からの視点からではなく、道を歩く人の視点からまちを表したものです。
今ここに公私の問題、プライバシーの問題が提出されていています。実際に風景が削除されている場所もあります。
そこではいかさか過剰気味に日本の都市空間の本質にまで言及されています。その批判の方向は、「僕らの生活スタイルは、公開するようにはなっていない」ため、「他人の生活空間を撮影するのは無礼」であり、また、それは「ややこしいこと」であり、「モラルに欠けた行動である」ということになっているようです。

ここには日本の都市空間の本質とは別の、いつのまにか閉じられてしまった都市の、道の空間のあり方が見えてくるのではないかと感じられます。

西洋の都市空間は日本とは異なり、公私がはっきりと区別されていると言われます。しかし、道においても、公園においても明るく、オープンで、誰もが集い、豊かなコミュニティが繰り広げられています。

コミュニティとは人と人がつくるいわば「なわばり」として考えられるでしょう。しかし、それは個人の空間だけではなく、個人と個人が重なり、重なりのなかの領域であり、その境界です。それら、境界はまた次の境界が重なり合って、まちが生まれてゆきます。そこを曖昧にするから、公園はひっそりとした誰も憩わない暗い場所となり、道には人の目が行き届かない危険な場所になってしまうのではないでしょうか。

プライベートな空間が接することによって、コミュニティが動き出します。「私」のないところに、コミュニティは育たないし、「私」をないがしろにしたり、包み隠してしまうところでまちは育たないと言えます。

かつては、日本の路地にも豊かな私が溢れ、開かれた私空間が公共をつくっていました。左の写真は細かな路地に溢れる古いまちの姿です。かろうじてコミュニティの原点が残されていますが、ここにも解体の波が押し寄せています。閉鎖性からはまちの豊かさも、安全性も、生まれないことでしょう。

いつものことですが、黒船が日本の公共性を鍛えなおしてくれるのではないかと感じています。

2008年10月17日

NPOまちぽっと

「NPOまちぽっと」は正式名称を 「NPO法人ローカルアクション-シンクポッツ・まち未来」 と言い、2つのNPO法人の合同合併によって、2007年12月11日に設立された新しいNPO法人です。

その設立趣旨は次のように表明されています。
「新たに誕生する特定非営利活動法人「特定非営利活動法人 ローカルアクション-シンクポッツ・まち未来」(Local Action-Think Pots まち未来)は、地域社会に住み、暮らす市民の視点から、市民の参加による持続可能な市民社会づくり、豊かな地域社会づくりを目指して、それに関わる政策および事業の提案を行い、その実現に向けて市民、市民団体と協働して取り組むとともに、そうした市民社会・地域社会づくりを担う市民活動を支援するために、調査研究・提案、市民活動・市民事業の支援、情報の発信などの事業を行います。 私たちは、地域を基盤に市民、市民団体自身が、政策を考え、提案し、その実現に取り組む市民活動・事業が、地域に育ち、発展することを願っています。団体の名称をシンクタンクではなく、シンクポッツにしたのは、政策提案と、その実現に向けた市民活動・事業を地域の市民を主体としてつくりあげていくということを意味しています。 シンクタンクからイメージされる1つの大きな器に地域資源を集中して提案していく形ではなく、器としては小さな、タンクではなくポットとしての地域の市民組織が連携して、ネットワークで結び合うことで、市民参加による、より地域の課題に即した政策提案ができると考えています。 ローカルアクション-シンクポッツ・まち未来が目指すのは、地域のポットが結び合うことでつくる政策提案の活動です。」

コミュニティシンクタンクといっても、行政が主導し、3セクのような組織が多いなかで、その弊害は市民に確実に広がり、それらが誘導するワークショップ難民や市民会議難民が溢れている一方で、会員による会費と業務委託費(だからといって独立した組織とは簡単に判断できないのですが)によって運営がなされているようです。

こういった情報は公開されていない組織が多いのですが、このNPOまちぽっとの前身である東京ランポ時代の2006年度収支予算書が公開されていて、具体的な活動がどのように行われているかうかがい知ることができます。とても参考になります。(( )内は前年度実績)

収入は
1.会費収入 1,510,000(3,257,000)
 正団体会員 850,000(2,630,000)
 個人正会員 350,000(345,000)
 団体賛助会員 110,000(105,000)
 個人賛助会員 200,000(177,000)
2.寄付金 520,000(960,500)
3.事業収入 5,650,000(5,672,345)
 調査研究 50,000(10,600)=資料代
 セミナー・研修 150,000(84,500)
 出版 400,000(300,600)
 活動支援など 1,500,000(1,509,845)=講師・パネリスト謝礼、相談料など
 受託事業 3,500,000(3,756,000)
 その他 50,000 (10,800)
4.助成金 1,500,000 (0)
5.雑収入 10,000 (1,138)
6.預り金 200,000 (172,783)=源泉徴収次期繰越し分
当期収入計(a) 9,390,000(10,063,766)
前年度繰越収支差額 2,600,648(3,668,020)
収入合計(b) 11,990,648(13,731,786)

支出は
1.事業費 2,800,000(3,062,088)
 調査研究 600,000(121,152)=助成事業
 セミナー・研修 100,000(74,608)講師謝礼など
 出版 750,000(946,709)=季刊まちぽっと制作費など
 活動支援など 500,000(578,473)=講師謝礼など
 受託事業 800,000(1,341,146)=講師謝礼、交通費、資料作成費など
 その他 50,000(0)
2.管理運営費 8,130,000(7,866,174)
 給与費 5,900,000(5,875,000)=職員2名、パート職員1名
 通勤費 300,000(285,080)=職員2名、パート職員1名
 交通費 10,000(5,390) 
 通信運搬費 120,000(114,389)
 事務消耗品費 100,000(108,659)
 備品費 30,000(0)
 広報費 80,000(78,700)=季刊まちぽっと郵送費など
 事務所費 450,000(283,500)=月額31500円(前年2か月分を加え14か月分)
 会議費 20,000(14,790)=理事会、三役会議など
 図書資料費 100,000(139,218)=雑誌・新聞定期購読費など
 諸会費 70,000(65,000)=シーズなど会費
 法定福利厚生費 800,000(774,308)=社会保険、労災保険など
 租税公課 100,000(71,200)=住民税(均等割り)
 その他 50,000(50,940)=パソコン管理費、振込手数料、コピー代など
3.予備費 20,000(0)
4.預り金 200,000(202,876)=源泉徴収前期繰越分支払金
当期支出計(c) 11,250,000(11,131,138)
当期収支差額 ▽1,860,000(▽1,067,372)=(a)-(c)
次期繰越収支差額 840,648(2,600,648)=(b)-(c)

また、その中期事業計画が次のように提示されており、コミュニティシンクタンク活動の目標値を示しているのではないかと感じられます。

<市民社会構想・政策の提案>
(1)10年後の市民社会政策研究会(調査研究・提案 07年10月~09年12月 )
(2)東京構想研究(調査研究・提案07年10月~08年6月)
(3)もう一つの住まい方・暮らし方研究・交流(調査研究・提案08年4月~09年3月)
<情報の発信・提供の体制整備と充実>
(4)市民・自治体政策情報会議(情報の収集・発信07年10月~10年3月)
(5)地域情報ネットワークの構築(情報の収集・発信07年10月~09年3月)
<市民自治・参加・分権の制度・仕組みの提案>
(6)分権・自治研究(調査研究・提案07年10月~08年6月)
(7)市民主体まちづくり 政策研究(調査研究・提案08年4月~09年3月)
(8)市民参加・協働研究(調査研究・提案07年10月~08年3月)
<自治・参加の機会の拡大と機会活用の支援>
(9)市民自治、市民参加・協働への支援、協力(市民活動支援07年10月~10年3月)
情報の発信・提供の体制整備と充実
(10)セミナー・研修(情報の収集・発信07年10月~10年3月)
(11)HP開設・更新(情報の収集・発信07年10月~10年3月)
(12)季刊誌、ニュースレター、書籍発行(情報の収集・発信07年10月~10年3月)
<市民活動助成、市民事業支援の拡大>
(13)草の根市民基金助成・交流(市民活動助成07年10月~10年3月)
(14)東京CPB支援(市民活動支援07年10月~10年3月)
(15)相談助言、企画協力、講師派遣など(市民活動支援07年10月~10年3月)
<市民活動・市民事業を支援基盤整備の提案>
(16)非営利市民事業体の金融と地域資源研究会(調査研究・提案07年10月~10年3月)