2009年5月6日

アートディレクション

「アートディレクションの可能性」は現在活躍するグラフィックデザイナーによるトークセッションが収められたものです。

彼らの多くはグラフィックデザイナーというその名称から想像される枠をはるかに超え、もっと重要な役割を担って活動しているようです。パッケージやポスターのデザインやCMなどの映像制作に留まらず、商品開発や企業イメージのプロデュースまで行っています。

企業や製品の本質を捉えて、ありのまま描き出すことに (私たちには思いもよらない素敵な描き方ですが、、、) 成功していると言えます。
プロデュースし、ディレクションし、そしてビジュアライズするという3役を引き受けている彼らは、、、、、、自分たちを「物申すデザイナー」と位置付けています。

一瞬にして物の本質を表現するビジュアルコミュニケーションという分野での彼らの能力は、ライフスタイルの方向性、しいては現代社会の方向性をも形造ることができるのです。

私の専門分野である”建築”といった長大で孤高と言われがちな’とっつきにくい物’ではなくて、身の回りのそこここに存在する’あふれた物’によって、方向づけることが可能なのです。

たとえば、資生堂のTUBAKIという製品は、その名を「なでしこ」でもなく、また「さくら」でもなく、静かな庭に妖艶にたたずむ『椿』をテーマにしています。『椿』は1年を通してその深い緑の葉に光沢を湛え、花は色も形状も個性が強く、豪華に、時には清楚にその花を咲かせます。実はもちろん長く黒髪に愛されて来た椿油を蓄えています。

日本女性の奥深い美と資生堂という企業イメージとを同時に具現化し、多くの人の視線を釘づけにするあのCM。それは視聴者の意識を同じ方向へと導く強さを持ったものと言えます。

コミュニティをデザインするということは群造形に近い感覚だと考えてやってきましたが、方向性をつけるさらなる強さが必要のようです。多様なエネルギーを受け止めることのできる、プロデュース力とディレクション力そしてそれらをありのまま、ビジュアル化するという事が必要のようです。

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