2009年5月19日

北九州市戸畑図書館-地域による図書館運営

辻桂子氏から戸畑で面白い人が図書館長をやっていると聞き、北九州市戸畑図書館、館長伊藤豊仁氏にお目にかかりに行きました。図書館の運営を尋ねると言うよりも、経営者にその経営理念を聞いたようなような印象が強く残っています。

北九州市では2005年に指定管理者制を導入したのを機に、地域の青年会議所がNSK日本施設協会を組織して、地域に根ざした情報発信のための新たな図書館理念を掲げ、その館長に伊藤豊仁氏を招聘したようです。

指定管理者とは、本来は市民の目線で、柔軟できめ細かなサービスを、というのを求めて導入されるものですが、どの地域でも実際にはコスト削減のために導入されており、サービスの空洞化へ繋がると批判が出ているケースが多いようです。

図書館の指定管理者には、図書館業務を遂行する全国規模の大手業者が請け負うことが多く、図書館を単に本を貸し出す機能としてしか考慮せず、地域の司書をアルバイターとして派遣するだけの運営になりがちですが、戸畑では自分たちの図書館を自らの経営理念で自分たちで運営しようと立ち上がったわけです。

現在は最初の1期3年が終了し、その成果が市から認められ、2008年度より2期目(5年)に入っているようです。

18人の司書職員(館内14人、4つの分館に4名)は90名の公募の中から選ばれたそうです。現在も大変苦しい運営状況・人的状況ですが、直営時には司書の資格を持った職員が半数しかおらず、業務が偏り、司書が図書館外部へも出かけてゆくなど、本来必要なはずの多様な運営を行うことができていなかったことに比べれば、むしろ現在のほうが効果的に業務が取り行われているということです。

伊藤氏は自ら企業家としての経歴を持ち、そのキャリアを生かし、図書館運営に地域のつながり、大学や学術団体との連携や市議会へのロビー活動などによてイベントや啓蒙講座を開いています。そこには、目指すべき図書館の姿があります。行動する図書館、情報を発信する基地、市民シンクタンクとしての図書館、、、、、。


伊藤氏には何事も、楽しまなければならないという、基本的な起業人の発想があるようです。リーダーの豊かで柔軟な資質とそれを支え登用した組織のバックアップがこの新しい図書館像を推進していると言えます。

本来の指定管理者制度の本質が見えてきます。

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