2007年8月15日

風景/まちの視点

岡崎の歴史家、市橋氏の父上である、画家朝井明泉氏の水彩画スケッチが絵葉書となっています。淡い水彩画で丹念に描かれた膨大な岡崎の風景はまちのさまざまなところに、かけがえのない思いが埋め込まれている証です。それらを共有することで、まちの魅力は引き継がれてゆくものです。ひとそれぞれにさまざまな視点があり、それぞれの人に目を向けるように、まちを大切にする、目を向けることはとても重要なことです。


ここには何気ない民家も、毎日通る川岸の桜の木々も、新しい施設も、もちろん木々の豊かな古いお寺もそれぞれ描かれています。驚くべきことに、普通では向けないような異なる視点を持った意外な橋の風景もあります。

こうしたまちの風景を描く試みはまちづくりのひとつの手法としてもとても重要で横浜などでも、地元の商店街や大学研究者、学生たちが協働して、町のいろいろな姿や風景を「横浜パッチワーク」や「まちづくり101の提案カード」として表わし、横浜らしさを発見する試みが行われています。

広重の「名所江戸百選」や北斎の「富岳三十六景」も、一人の浮世絵師の表現としてだけではなく、まちを共有するひとつの手法だったのではないかと思います。

先日、岡崎市民病院についてコメントいただいたmariさんに絵葉書のひとつである岡崎市民病院のものをお送りしました。古いかすかな記憶や両親への思いがあふれてきたそうです。画家朝井氏とmariさんの思いが時代と場所を越えて、ぴったり重なったようです。

一人ひとりの思いは個人的な取るに足らないもの、と思われがちですが、実はそうではなく、案外多くの人に共感を与え、共有のイメージとなっているものなのです。市民すべてのまちを見る、感じる視点を集積してみると、まちを考える視点も変わってくるのではないかと感じます。それこそが市民のまちではないかと考えています。

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