2009年7月5日

軽井沢訪問記/ヴォーリズ、レーモンド、吉村順三から原広司

ナショナルトラストサポートセンター主催のタリアセン(軽井沢塩沢湖畔)見学会に参加する機会がありました。

タリアセンには44年会館(旧軽井沢郵便局)や朝吹山荘(ヴォーリズ設計)、夏の家(レーモンド設計)など軽井沢の歴史を作ってきた大切な資産が移築保全され、レストランや美術館として活用されています。その活動の中心となっている軽井沢ナショナルトラストの藤巻氏に貴重な説明をいただきました。

旧軽井沢郵便局の保存活動をきっかけに藤巻氏はじめ地域の有志が軽井沢の別荘や教会などの文化資産を守るため、活動始めました。地域が自分たちの文化や歴史を後世にきちんと残そうと、それが自分たちの歴史であり、同時に自分たちの将来を形作るものとして考えられているのだと感じました。

また、軽井沢を歩いていると、いくつかの別荘建築には教育員会から委託された臨時職員の方たちがはりつき、残された施設を広報し、管理している様子も見られました。周辺の古びてきた別荘を今後どうしようか、愛情を持って自分たちのことのように真剣なまなざしを向けています。

どの地域も今、自分たちのアイデンティティがいかなるものか、生き残りの手段として切実になっています。5億円もの費用をかけて、東京の古い住宅を元藩主末裔の住宅というだけで、旧本多邸を研究者から押し付けられ、買わされ、一方で地域の歴史や文化資産には目もくれないという岡崎市は特殊事例でしょう。



この機会にいくつか、建築を見て回りました。順に、レーモンド設計の聖パオロ教会、ヴォーリズ設計の浮田山荘、吉村順三設計の山荘。
どれも存在感があり、今に引き継がれ、今後も軽井沢を形成してゆくことでしょう。











その存在感とは何か、、、、建築の姿が立ち現れる瞬間をどのように設計論として記録してゆこうか考えています。ここを歩くと、その答えのひとつと考える「素材と私たちの関係」が強くつながれていることがよくわかります。
どれも私たちに熱く、強く語りかけてきます。建築家が選んだ素材、それらを取り込むための構法やディテールが真摯に、大胆に現わされているのです。
語りかけられた私たちは敏感に反応し、そこに風土や文化、愛情や思いなど、、、、、、地域の普遍性を感じてしまいます。そうした素材と私たちの関係、その発想は師内井昭蔵から最も影響を受けた視点ですが、この素材と私たちの関係を生み出すことが建築が立ち現れる瞬間の一つではないかと考えています。

最後に86年、原広司によって設計された田崎美術館。

ここは素材そのものというより、光あふれる空間の中にほのかに模様を刻まれたガラスが幾重にも重なるように配置されています。軽井沢の透明感あふれる空気がデザインされ、再現されているように感じられました。

地域の透明感、これも風土です。かつて、それを求めて人々はやってきたわけですから。

しかし、その透明感も、ここ軽井沢でも失われつつあるように感じられました。それらを濁すような、けばけばしく、張りぼての見せかけの商業建築や別荘群が目についてきたのです。

古い文化や歴史の上に、そこに新たな感性が真摯に重ねられながら、地域は熟成してゆきます。
(ref→http://architect-studio.com/topic.html

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