2009年8月7日

市民立法から市民行政へ

市民立法機構第2回総会における基調講演でキッコーマン社長茂木友三郎氏がアメリカでの地方自治の様子を講演されています。(1998年5月に開催されていますが、、、、)

「今、地方分権が盛んに議論されていますが、地方分権だけでは地方自治は成り立たない、生まれてこない。ただ中央の権限を地方に移しただけでは地方自治にはならないのであって、それプラス草の根民主主義がなければ駄目だと思います。 それでは、草の根民主主義の基礎は何かといえば、やはり私は市民意識だと思います。別の表現をすれば、市民社会に対する人々の帰属意識ですが、そういう市民意識が草の根民主主義の基礎になっているのだろうと思います。・・・・・

・・・・・
この町議会は、小さな町なので、助役の家で開会するわけです。さらに、小さな町なので立法と行政が分離しておらず、町長が町議会の議長を兼ねていました。そして町議会議員が二人いて、三人でモノを決めるわけです。三人で決めるということは、町議会議員が二人賛成すれば、それで決まり。二人が一対一になると町長が決めるという仕組みです。

また、みんな仕事をもっているので、議会が開かれるのは夜の七時からです。この町議会の議員は全て時間給で、欠席すると給料はもらえません。こうして、夜の七時から十時まで議論をするわけです。」
http://www.mmjp.or.jp/gyoukaku/toron/199807_2.htm より)

地方分権という新たな中央集権主義にならないように、地域単位の民主主義、草の根民主主義が不可欠です。

矢祭町の原点はここにあるようです。こうした市民の意識と柔軟なシステムは市民自ら、議会にかかわることができ、立法機能や行政機能を市民の領域へともたらしてくれるものではないでしょうか。

それらは市民による行政ユニットや市民マニフェスト、市民標準規格など新たな制度が予感されます。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「地域単位の民主主義、草の根民主主義が不可欠です。」に触発されて

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q149488639?fr=rcmd_chie_detail
az200kaさん
福島県矢祭町は如何ですか?
第三子以降を出産すると100万円支給されますよ・・・→
http://www.japan-lifeissues.net/news.php?newsID=00002771&topic=
回答日時:2006/9/28

島崎義治教授の言われるように、地域単位で特徴(いい意味で)を出していくことがより求められていく状況にあると思います
税金を払えば、後は全て行政が引き受けてくれた時代の転換が始まったのでは、先行しているのが
ここで取り上げられた福島県矢祭町や長野県下條村などでは 
今は有名な道普請しか知らなかったが、下のレポートを読んでびっくり!!!!!


http://tkfd-shumatsu-gakko.jp/cat5/post-12.html
1. 【視察レポート】国内視察 長野県下條村 ... 
2009年7月5日 ... 杉並区の山田宏区長が考えていた減税自治体構想に繋がる取組を、下條村は既にしているのだ。 ... 続いて資材支給事業であるが、これは地域住民の生活環境を整備するために、住民自らが施行する工事について村がその ... 続いて企業誘致であるが、確かに三遠南信道路の建設によるところも大きいが、加えて下條村が長野県内№1の若年人口を ... 【講義レポート】vol.15 「市民・働くものが担う新しい公共の創造を目指して」 田中羊子(ワーカーズコープ・センター事業団 専務理事) • 【講義レポート】 vol. ...
tkfd-shumatsu-gakko.jp/cat5/post-12.html –


【視察を通じて感じたこと】を貼り付けます

下條村が最も特殊と言えることは、その施策の流れにある。一般的に施策の手順は、①インフラ整備、②企業誘致による雇用増、③人口増という流れだが、下條村は①人口増、②インフラ整備、③企業誘致という流れになっている。

 この特殊な施策の流れを解明するため、これらを支える事業について記載する。
 まず、人口増を支えた要因として、職員給与のカットやコスト縮減により生じた余剰金を、「若者定住促進住宅」の建築に充てたことが挙げられる。下條村は、120年間合併していないにも関わらず、村役場の正規職員を59人から35人と4割以上削減し、職員給与のカットを実現した。住民の行政ニーズの多様化や介護保険制度等、行政の肥大化とも言われ新たな対応を求められることが多い現状で、健全化団体になったわけでもないのに、合併もせず職員数を4割以上カットしたのは極めて異例といえよう。これは村長のリーダーシップによるところが大きい。ポイントは、キーマンである労働組合のトップを、村役場では事務次官のような存在の総務課長に据えて、改革を断行したことにあると推察した。これら正規職員削減等の改革により生み出した積立てが、現在、29億6,432万円に達する。これは、村の年間予算約1年分に匹敵する。杉並区の山田宏区長が考えていた減税自治体構想に繋がる取組を、下條村は既にしているのだ。(第1回講義「減税自治体構想」山田宏 杉並区長 参照)

 そして人口増加につながっている「若者定住促進住宅」の建設事業について、人口5,000人未満の自治体において、村営マンションを建設するという事業自体は、特段珍しいものではない。競合する民間事業者が居ないことを前提とし、「きれいなマンションさえ建てれば、若い人がいっぱい移住してくれるだろう」という幻想から建築して失敗した事例は、全国各地にある。では何故、下條村では成功しているのか。
 以下2点の理由が挙げられる。①人口10万6千人を擁する飯田市の中心部まで、車で20分程度の距離にある。②家賃が飯田市内の同程度の民間マンションと比較して半額(72,000円→36,000円)。いずれも特殊な理由だ。
 また、この施策が住民の負担を生むにも関わらず地域に受け入れられているポイントは、①補助金を使わない住宅なので村がフリーハンドで入居者を選択できること(良い人に入居してもらえると村側は説明)、②若者定住促進住宅として入居条件を「子供がいる」か、これから「結婚をする若者」に限定している。③入居する若者が地域に溶け込んでもらうために、村の行事への参加や消防団への加入等を入居条件としている(おかげで36歳以上は、消防団から退団できる)の3点と考えられる。

 続いて資材支給事業であるが、これは地域住民の生活環境を整備するために、住民自らが施行する工事について村がその資材を支給する事業で、平成6年度から平成19年度の間で、累計1,123箇所(経費:約2億5千万円程度)を整備した。住民から理解を得てこれだけの事業を行うことができるのは、行政に頼っているままでは駄目だという住民の意識改革が成功した結果といえる。また、それには新たに入居してきた元気の良い若手の存在があってこそということも忘れてはならない。
 続いて企業誘致であるが、確かに三遠南信道路の建設によるところも大きいが、加えて下條村が長野県内№1の若年人口を抱える地域であることにより、若い労働力を確保できるという目算がたったからと推察した。企業にとって労働者の確保は、その存立基盤に係る重要な要素である。
 以上のような政策の流れは、下條村の特殊性といえる。しかし、下條村の取組は、特殊性だけでなく普遍性も備えているので、この点についても考えてみたい。

現在国による規制によって縛られている状況でさえ、①役場の職員の意識改革を進めるとともに職員数を4割削減できれば、自治体が独自施策を実施する財源を確保できる。②国や県等の言いなりにならず、自分達の将来は自分達で決める。③勇気を持って第一歩を踏み出すことで、人口増や地域の活性化等が実現し、住民の幸福増進に寄与できるということである。

 地方自治を進める上で、現在最も課題となっていることは、規制が多い上、財源がないので最終的な自己決定権が自治体にないということである。もし、自分達でコストを縮減して財源を確保できれば、現在の規制が多い中でも独自の取組を行うことができる。下條村はそのことを示した。

 これを支えた第一歩として、下條村では、住民が、自分の問題として地域のことを考え、行動する仕組みや環境づくりを行政が構築した。スタートは情報公開による住民意識の変革だ。「行政が何をしているかよく分からないが、任せておけば良いだろう。」という意識を壊すため、村長は「村が潰れるぞ!」と地域住民に対して積極的に情報提供を行ったそうである。現在もこれは続いている。

 例えば、今は有名な道普請も、地域住民に提案した当初は、どの集落も嫌がった。しかし、ある集落が成功したことで、我も我もと、先を争うように事業が進んでいった。この道普請の副次的効果として、一つのものを一緒に造り上げる地域住民の一体感が醸成され、住民間の連帯が生まれたそうである。活動を通じて生まれた連帯は、長い間残る。

 第1回の講義で、法政大学教授の田中優子先生が「江戸時代は農業を通じて地域の連携が図られた」という話をされたが、下條村の道普請は、その連携を生むための一つの手段である。(第1回講義「江戸時代の官と民」田中優子 法政大学教授 参照)
 このように地域コミュニティの活性化を図るためには、一緒に何かを造り上げること。これは普遍性がある事実だと思われた。

 下條村のように、自らのことをどうしたいか、自らが考えて、自らが決定し、自ら行動する。ごく当たり前のことだが、これができて初めて地方自治はスタートラインに立つことができるのだと実感した。
                                              文責:浜松市 大澄 憲雄
• カテゴリ:    レポート,    第4回 国に頼らない創意工夫の地域づくり(国内視察1)

島崎義治 さんのコメント...

コメントありがとうございます。

いいなと思うような政策にはそれを生み出せる組織の活力や新しさがあるということですね。組織の改革をどのようにしたらいいか関心があります。

今後ともよろしくお願いいたします。