2009年7月29日

体温のないマーケティング

おちまさと氏の「企画の教科書」は企画を生み出す生の瞬間をとらえていて、デザインが生まれる瞬間、イノベーションが生まれる瞬間を描こうとしている私にとって実に興味深い、現場から生まれた教科書です。

挿絵や口調は面白おかしく書かれたように見せていて、実のところ、本当に真髄を表わしているように感じられます。多くの人、企画など言葉でしか知らない行政の職員やこれから社会に出てゆく大学生などにも大人の教科書として使えるようなものです。

企画とは、そのアイデアの創出はデザインの方法やイノベーションの態度そのものです。

「記憶は企画の構成パーツ」と言いい、企画とは記憶をつなげ合わせ、複合化することを意味しています。イマジネーションとは何か一気に壮大なアイデアを作り出すことではなく、一つひとつの記憶の連続であり、ジグソーパズルのようにつなぎ合わせてゆくようなものと僕も考えています。

そして、成功する(した)企画とは社会の特性を打ち破るもの、感動を与えるような大きな変化をもたらすもの、多くの人の興味を持つ普遍性を持つこと、そして、社会を裏切り、やられた感を生み出すこと、であると説いています。



それこそが価値のイノベーションのことですね。


そしてなにより大切な視点がマーケティング、消費者に対する構え方です。これはいろいろな場面で役に立つでしょう。

マーケティングはマスとしての消費者ではなく、一人ひとり顔のある消費者の複合体であるという認識を持つことから始まりますが、マスの消費者としてしか見ていないもの、それを彼は「体温のないマーケティング」と言います。

データとしての数値でそのまま商品を企画するのは誰でも、コンピューターでもできる。まず数値を疑うことから始めるのだそうです。

それはマーケティングやその分析とは結果ではなく、これからの手段であり、戦略になるということです。

平均化された数値を鵜呑みにすることはないでしょう。そこにどんな問題が潜んでいるのか、懐疑的、分析的になるはずです。そして、どこに消費者の本音があるのか、そこを自らの目で掘り下げることが企画の真髄と言えそうです。

それを彼はこう表現しています。
「受け手の明確な意思がないのに、送り手が勝手に『こんなもんでいいでしょ』と思いこむ、これこそが体温のないマーケティングなのです。おばあちゃんが『私は分からないけど、若い人はこう言うのが好きなんでしょ?』と近所で買ってきた甘いだけのケーキを出す感じです。」

市民の多数意見というものを自ら作り上げ、それをそのまま実行する行政の在り方とは180度異なる戦略と言えます。しかし、それが、本当の消費者の姿を発掘しないと生きていけない民間の切実な戦略のあり方なのです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

面白そうな本を教えていただきありがとうございます
読んでみたいと思います

「イノベーション」をキーワードにすると下の本もあります

「THE MEDICT EFFECT」:『メディチ・インパクト』
FRANS JOHANSSON 20051124第1刷発行

下のタイトルで検索検索すると目次があります (貼り付けました)
1. お勧めの本!!!メディチ・インパクト « neouto rewrites

洋書で、日本語版もある、
ほんの名前はメディチ・インパクト(The Medici Effect)
学問や技術や知識の分野のバリアを崩してインノベションを発生する事についての本です。
作者はレストランや科学や様々な例を使って分かりやすく説明してるから、(一部省略)
誰でもこの本から得るものあるだと思うから、是非ちょっとでも見てみてください。
チャプターs:
第一部 交差点
1章 イノベーションの生まれる場所
2章 交差点が生まれるとき
第二部 メディチ・エフェクトを生み出す
3章 垣根を取り払う
4章 連想のバリアを壊す
5章 偶発的な概念の組み合わせ
6章 偶発的な組み合わせを見つける
7章 アイデアの爆発に火をつける
8章 爆発をわがものにする
第三部 交差的アイデアを形にする
9章 失敗を乗り越えて実行せよ
10章 決してひるまず、成功へと前進する
11章 既存のネットワークから飛び出す
12章 ネットワークからの脱却
13章 リスクを引き受け、不安に打ち克つ
14章 公平な目でリスクを測る
15章 交差点に踏み込め



これより下はアマゾンから一部添付します


メディチ・インパクト (Harvard business school press) (単行本)
フランス・ヨハンソン (著), 幾島 幸子 (翻訳)

商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
誰にでも、世界は変えられる。百花繚乱のルネッサンスを可能にした“創造性の爆発”。そこに、イノベーションを起こす秘訣があった―。発明・発見・イノベーションの必須条件を具体的に論じた画期的ビジネス書。

カスタマーレビュー から貼り付けます

知的興奮に満ちた本!, 2005/12/15
世界には、文明の十字路と言われるような場所、異種の文化が衝突して新しい文化を生み出す発火点となる場所がある。しかし、著者は、それと同じ発火点(価値創造の場所)が、われわれの頭の中にもあると主張する。
そこは、「異なる文化、領域、学問が1か所に収斂する場所」である。したがって、画期的なアイディアを生み出すためには、自分の専門分野に閉じこもることなく、様々な分野からの刺激に身をさらすことを著者は強く勧める。
このように、異なる分野が出会う場所のことを、著者は「交差点」と呼び、そこで目を見張るような革新が次々と生まれることを「メディチ・エフェクト」と名づけている。(本書の原題は『メディチ・エフェクト』である。)
(一部省略)
本書は、知的創造に携わるすべての人に裨益するところ大であると確信する。翻訳も平易であり、具体例に満ちていて、たいへん読みやすい。

島崎義治 さんのコメント...

いつもありがとうございます。

交差点、連想のバリア、偶発的な組み合わせ、ネットワークからの脱却、、、これも面白そうですね。イマジネーションそのものですね。

ありがとうございます。読んでみます。これからもよろしくお願いいたします。