2007年7月20日

模写/スケッチ

かつての同級生と共に高校時代の恩師にお会いしました。当時、国語の先生で、今は退職されて、http://nostalz.exblog.jp/「のすたる爺の書斎から」というブログを書いておられます。絵画や芸術にも、そしてもちろん文学にもその造詣の深さ、広さがうかがわれます。

何かを作るときには、形をなぞり、手を動かすことから、新しい何かが生まれるのだと話したところ、絵の世界でも模写が大切だと言われました。建築のデザインを始めて以来、「スケッチ」や「スタディ」と呼び続けていますが、「模写」と聞いて、ずいぶん懐かしい思いがしました。たぶん、絵画でも先生の分野である文学でも同じなのだろう、そして、ものづくりも同じだと思います。不思議と自ら手を動かすことで、見えてくる何かがあるものです。

形をなぞるだけで、新しいこと、個性的なことは何もありません。ひたすらなぞるだけですが、ある時、その筆緻タッチが大きく揺れる時があり、新たな形が現れてきます。 なぞりながら、形をつくるための条件を探り当てようとしているわけですが、条件を探り当てた時、それらが飽和した時、その瞬間は訪れるのではないかと感じます。

先日、視覚障害者が絵を描いているところに出会いました。彼は蝋をインクとして作られた万年筆を用いて描いていました。僕たち健常者が目で追って描くところを、蝋で盛り上がった軌跡を指先で辿りながら、追いながら、次の筆を進めるのです。たぶん、模写にはもっと真剣であるだろうと思います。だからこそ、障害がありながら、あるいはあるからこそ、心に訴える絵や書が描けるのだと感じます。デザインも、まちづくりもすべて同じで、真剣に模写をする必要があるのです。

それはまちの姿、人の生活の姿を見ることから、記録することから始まります。
まちの活動の姿がまちをつくるのです。

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