内井事務所に公団から仕事が持ち込まれた時には設計はほとんど終わりに近づいていて、そこから新たに設計をするようなものでしたし、BAも簡単にはMAの言うことは聞いてくれないりっぱな建築家たちばかりでした。豊かな道と赤瓦の屋根とレンガの外壁という共通したコンセプトを共に試行錯誤しながら、コンセンサスを得ていったのです。
デザインコードでまちづくりができるなら苦労はしません。まちも生きているし、心も持っている。
内井さんは僕たちスタッフと仕事を進める時も、「島崎さん、どう思う?」からやり取りが始まり、まずじっくりと話を聞いてくれます。それでは建築家としてやりたいことができないと思われるかもしれませんが、設計とは、デザインとは対話から生まれるのです。スタッフや発注者、施工者との対話、さまざまな状況をすべて聞いたうえで、内井らしさが出てくるのです。僕らはお釈迦様の手のひらの孫悟空のようなもので、内井さんのデザインから離れて設計しようとどんなに考えて振舞っても、結局は手のひらの上なのです。
内井さんが晩年、まちづくりの調整役に情熱を傾けたように、僕もまちづくりに向いたいと思います。でも、彼を見ているとまちづくりには人間性がとてつもなく現れるんだなぁと感じます。人間力を鍛えなくてはとてもまちづくりなどできないだろうな。
1 件のコメント:
まちづくりも会社経営も対話と人間力。結局はものごとを前に進めるために必要なことは、まったく同じですね!
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